昨年の夏、ちょうど吹奏楽レコーディングの終わりに
指揮の大和田雅洋さんよりちょっとお願いが、と
サクソフォンの協奏曲を依頼したいというお話がありました。
どんな内容で行きましょう?とお聞きすると、
カッコよくて、泣けるメロ!とにかく良いメロディを!
さらに、アルトサックスとソプラノサックスの持ち替えがあり、
カデンツァ(伴奏お休みでサックスだけのソロ)もあると嬉しい!
サックスが出せる超高域もガンガン使ってください!
曲尺は20分以上で!
と。
ということで、ずいぶんとどうしようか悩みました。
特定のイメージがない場合、いつも曲の出だしは悩んでしまいます。
あーでもない、こーでもない、と悩みはしましたが、
私のフィールドは劇伴ですので、ひとつの物語を想定して、
物語仕立てで音楽を付けていくイメージで作曲していくことにしました。
El Dorado、スペイン語で「黄金郷」を意味する言葉ですが、
そんなおとぎ話のように伝わる伝説の黄金郷を追い求めた、
無謀で、そして勇気あるひとりの冒険者の物語です。
信じた夢への挑戦とはいえ、多くのことがうまくいかず、自暴自棄になることもあります。
けれどそんな彼を支えてくれる女性の存在や、諦めきれない願い。
紆余曲折の末、ようやく辿り着いた黄金郷での戦いでは、遺跡の罠や、
同じように黄金郷を狙う人物たちとの攻防をくり返し、命の危険にもさらされます。
そんなピンチを二人の力で乗り越え、最後に彼が手にしていたのは、夢に見た黄金でも成功でもなく、
すぐそばにあるかけがえのない存在のぬくもりでした。
未知なるものを目指した冒険者の挑戦と、新しい音楽を切り拓きたいという私自身の挑戦を重ね、
タイトルを『El Dorado』にしました。
そんな経緯で誕生した
サクソフォン協奏曲「El Dorado ~旅人は唄う 日々の儚さを喜びを~」
2024年6月28日に神奈川県立音楽堂にて初公演となります。
どうぞよろしくお願いいたします。
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